2015年2月14日土曜日

朝日新聞第三者委員会林香里(はやしかおり)委員の分析を分析する

朝日新聞第三者委員会報告書ですが、私はそれなりに踏み込んではいたものの、肝心要のところで懐疑的な部分が残るという感想でした。

http://ianfucwi.blogspot.jp/2015/01/blog-post_27.html

そのうちの一つ、「朝日新聞報道が与えた国際的な影響」については、断定を避けたかったのか、なんと3論の併記(一応「アプローチの違い」と説明)となっていました。非常に簡単に言うと、

1 岡本委員・北岡委員=朝日が激化させた
2 波多野委員=朝日の長年のキャンペーンでの影響は大きい
3 林委員「朝日新聞の報道の影響が限定的であるという結論」


となっています。そこで林香里(はやしかおり)委員の分析内容を検証してみましょう。報告書72ページから始まるその内容は、欧米の代表的新聞10紙や韓国の5紙などで関連キーワードを検索し、定量的分析をするという一見面白いものに見えました。しかし、以下の点で決定的に問題があります。

1 分析内容について

欧米紙で「Abe が1141回、Koizumi が200回、Murayama が155回、Miyazawaが101回」出てくる、「安倍晋三抜きん出ている」などと書いていますが、これは数だけの問題ではありません。

中身とタイミングをよーく見てみましょう。

http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014122201.pdf

の77ページの図「英、米、仏、独の慰安婦問題関連報道における政治家の言及頻度(年別)」に注目します。

1991年まで 全紙合計で「宮澤」1件のみ
1992年「宮澤」60件=訪韓謝罪8回(「安倍」は8件)
1993年「河野」18件=河野談話、「宮澤」22件(「安倍」は1件)
1994年「村山」32件=アジア女性基金準備?、「河野」1件
1995年「村山」77件=アジア女性基金、村山談話、「河野」5件他

1996年「橋本」89件、「村山」22件
1997年~2000年 全紙合計で一桁のみ
2001年「小泉」40件他



2007年「安倍」386件他



2013年、2014年共に「安倍」300件以上

この結果を分析します。確かにトータルでは「安倍首相」への言及は林氏指摘の通り大変多いです。しかし、それは慰安婦問題で完全に方向性が決まってしまった後、第一次安倍政権の2007年以降、また第二次安倍政権誕生後に集中していますので、今の安倍政権に対する批判を表してはいても、あまり意味のある数字ではありません。

慰安婦問題に火が着いて、それが定着したのは1991年夏(金学順さん)~1995年です。この調査の本題である「朝日新聞報道が与えた国際的な影響」を検証するためにはここの流れを見るべきです。そこが分かっていないのでしょうか?意図的に無視したり煙に巻いたのでしょうか?

日本側で真に重要なのは、

1992年の宮澤訪韓時の8回の謝罪と
1993年の河野談話発表
1995年のアジア女性基金です。


これらによって、やってもいない事を「悪い事をしましたのでこれを認め反省し謝罪します」と理解されてしまいました。

宮澤首相を謝罪に追い込んだのは主に朝日新聞です。その続きとしての河野談話を出させたのは主に朝日新聞です。(事務方にも問題があったと思いますが)

2 吉見義明教授との関係について

池田信夫氏も書いておられますが、

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51925146.html

この林氏は「吉見義明教授の裁判闘争を支持し、『慰安婦』問題の根本的解決を求める研究者の声明」なるものの賛同者であり、慰安婦問題についての中立性に大いに疑問があります。(もしも林氏が「植村氏に訴えられた西岡力教授の裁判闘争も支持する」というのならばこの点について見直す可能性はあります、多分それは実現しないでしょうが)

以上により、私は朝日新聞第三者委員として「朝日新聞の国際的な責任は重くない」と主張した林香里委員の説には同意できません。

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